【ママ建築士の視点】バリ島で感じた建築の維持管理と、タワーマンション「大規模修繕工事」のリアル

こんにちは!一級建築士・不動産エージェントの岡崎愛です。

先日、Amebaブログ(アメブロ)の方で「家族で行ってきた夏休みのバリ島旅行」について少し書かせていただきました。

リゾート地ならではの緑と風が通り抜ける開放感や、自然素材を生かした空間づくりは、建築士としてもすごく刺激を受けるひとときでした。

今回の滞在では、以前よく宿泊していた「The Ritz-Carlton Bali」へランチに出かける機会もありました。食事の合間に、かつて長女が5歳、6歳の頃にお誕生日会を開いてもらうなど、家族で何度も利用していた施設内のキッズクラブ「リッツキッズ」にふらりと立ち寄ってみたのです。すると驚いたことに、実に7年もの歳月が経っているにもかかわらず、スタッフさんが当時の滞在や私たちのことを鮮明に覚えていてくれました。

すっかり大きくなった子供の姿に一緒に感動し、とても温かく迎えてくれたスタッフの方々との再会は、今回の旅の本当に愛おしい思い出です。

そんな温かい余韻に浸りながら敷地内を歩くと、相変わらずどこを切り取っても手入れが行き届いた美しい庭園が広がっていました。

南国の強い日差しや潮風、激しいスコールといった、建物や植物にとっては非常に過酷な環境であるはずのバリ島で、いつも完璧にキレイな状態が保たれているのは、陰でスタッフの方々が毎日丁寧に手入れ(メンテナンス)をされているからこそだと肌で感じます。

こうした「丁寧な維持管理」と「温かい人のサービス」に触れて、ふと「これって私たちが暮らすマンションの維持管理ともすごく似ているな」と思いました。

一見すると頑丈で変化がないように見える建物も、日々確実に経年劣化が進んでいます。

そして、この「建物をどう維持し、価値を守っていくか」という視点は、私たちが暮らす港区・湾岸エリアのタワーマンション(タワマン)にもそのまま繋がります。

築10〜15年を迎えるタワーマンションで必ず直面するのが「大規模修繕工事」。戸数の規模によっては10億円〜15億円規模に達することもある一大イベントです。

一般的な低層・中層マンションとは大きく異なる、タワマンならではのユニークな特徴やハードル、そして港区特有のリアルなコスト事情について、プロの視点も交えて分かりやすく解説します!


1. 「足場」が組めない!?タワマン特有の工事手法

通常のマンションであれば、建物の周囲に金属製の足場(枠組足場)を組み、メッシュシートで覆って作業を進めます。

しかし、30階・40階を超えるタワーマンションでは、地上から足場を組むことが物理的にできません。そのため、以下のような特別な工法が用いられます。

  • ゴンドラ工法: 屋上からワイヤーでゴンドラを吊り下げ、作業員が下降しながら外壁の補修や塗装を行います。風の影響を受けやすいため、強風の日は作業がストップすることも。
  • リフトクライミング足場: 建物に沿って昇降する特殊な足場を設置する工法。

超高層階は地上よりも遥かに風圧が強く、紫外線や建物の揺れによる影響をダイレクトに受けるため、耐候性の高いハイグレードな塗料や目地材(シーリング材)を選ぶ必要もあります。

施工できる業者が限られ、工事の安全・工程管理には高度な技術とノウハウが求められます。

2. 修繕費用が跳ね上がる「コストの壁」と港区ならではの「盲点」

タワマンの大規模修繕は、準備段階(仮設工事)の特殊な機械運用コストや、スカイラウンジ・内廊下・防災システムといった多岐にわたる共用設備の修繕が重なるため、一般的なマンションに比べて費用が高額になりやすい傾向があります。

さらに、私たちが暮らす「港区」特有の見落とされがちなコスト要因も存在します。

大規模修繕工事の期間中は、資材を運ぶ大型トラックや多くの職人さんが移動するための車両が毎日何台も行き来します。

しかし、タワマンの敷地内にこれらすべての作業車両を停めるスペースを確保することは難しく、近隣の駐車場を長期で借り切る必要が出てきます。

物価や地価の高い港区ですから、周辺の駐車場代も当然一等地価格です。

数ヶ月から1年以上に及ぶ工事期間中、複数台分の「駐車場代」や、都心の複雑な交通規制・搬入ルート制限に伴う「車両の運搬・誘導警備費用(車両費)」が積み重なると、それだけで数百万円、時には数千万円単位の差となって全体の費用にのしかかってきます。近年のインフレや資材高騰も相まって、全体の相場はさらに上昇傾向にあります。

3. 「眺望」と「暮らし」への影響

工事期間(1年〜2年近くに及ぶこともあります)は、居住者の皆様の日常にも影響が出ます。

  • ベランダの使用制限: 外壁補修や塗装の期間は、洗濯物が干せない・物を置けない時期が発生します。
  • プライバシーと眺望: ゴンドラで作業員さんが窓の外を通るため、日中でもカーテンを閉める必要が出てきます。高層階ならではの「カーテンを開け放して過ごす開放感」が一時的に制限される点には配慮が必要です。

芝浦界隈のタワマン工事実績と積立金のリアル

実際のところはどうなのか、芝浦・田町エリアの代表的なタワマンの工事実績から算出してみました。

現在、近隣の「キャピタルマークタワー」はちょうど大規模修繕工事の実施中。「グローバルフロントタワー」は屋根防水などは実施済みであるものの、外壁などの大規模修繕工事はまだこれからというフェーズにあります。

そのため、すでに一連の工事を無事に完了している「芝浦アイランド」のグローヴタワーとケープタワーの実績を参考にしてみると、1戸あたりに換算しておよそ120万〜150万円ほどになります。

しかし、この2棟の収支報告書を確認してみると、これほど大きな工事を無事に終えたうえで、将来の第2回、第3回修繕を見据えた十分な修繕積立金残高をしっかりと残せていることがわかります。

工事を無事に完了させることだけでなく、その先の建物のライフサイクルを見据えて資金を枯渇させない計画性の高さこそが、住まいの安心感に直結しているのだと感じます。


建築士&エージェントの視点:購入前に「修繕履歴と長期修繕計画」をチェック!

タワーマンションを検討される際、お部屋の内装や華やかな共用施設に目が奪われがちですが、私たちがプロとして必ず確認するのが「これまでの修繕履歴」と「これからの長期修繕計画書」です。

  • 適切なタイミングでメンテナンスが行われているか?
  • 修繕積立金の積立状況(不足金や未納がないか)
  • 次回の大規模修繕に向けた合意形成が管理組合で進んでいるか?

マンションによっては、オーナーが投資用で所有している比率が高い場合、一時的に多額の費用がかかる大規模修繕工事の決議を先送りしてしまうケースも見受けられます。

しかし、それでは長期的に建物の価値を落とすことになりかねません。

バリ島の上質なリゾートが、丁寧なメンテナンスによって時を重ねるごとに味わいとブランド力を増していくように、日本のタワマンも「正しく手入れされているか(ハード面)」と「適切な管理体制(ソフト面)」の双方が揃って初めて、本質的な価値(=売却時の強さ)が決まります。

10年〜15年周期で訪れる大規模修繕工事は決して安くはない買い物ですが、自分たちの住まいを長く大切に育んでいくための「前向きな投資」として捉えると、また違った見方ができるのかもしれません。

芝浦・港区エリアで「このタワーマンションの管理状態や将来の修繕リスクはどうなの?」と気になった方は、建築・不動産・修繕のプロとして多角的にチェックいたしますので、ぜひお気軽にご相談くださいね!



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